Classic Paipo / 小浜城床板古材×陶磁器
2024-11-01 | 未分類
” Classic Paipo ”
施主 :大黒氏
材 :欅 (若狭・小浜城床古材)
陶磁器:梅田純一
染 :庄司拓也
縫 :林由井
漆 :堤卓也
台座 :那須直也
総括 :田中宗豊
2024年新調
2018年のある日、
「見せたいものがあるから今から来れないか?」
と、磁器作家の”梅さん”こと、故・梅田純一先生から呼び出しがあった。
すぐ行きます、と返事をして、梅さんの工房がある旧・杭ノ瀬小学校の杭ノ瀬独学舎に行くと、「こっちに来て」、と言われ、階段の踊り場に案内された。
そこに横たわっていたのは、大きな一枚ものの欅の板材であった。
聞くと、明治時代に解体された、若狭・小浜城の床板だった材だと言う。
梅さんが宍喰に移住してくる前に、滋賀に窯を構えていた時代に、京都の骨董屋で出合い、一目惚れして購入したものだと言う。
そして、滋賀から宍喰に移住する際にバンの屋根に乗せてきて、この踊り場に置いてから30年以上、一歩も動いていない、と言う。
「これで、何作れる?」
と、突然の質問をされて、咄嗟に返答したのが、
「僕はサーフボードの作り手やから、サーフボードでしょうね、、」
と、返すと、
「じゃあ、やる」
と、梅さんは即答。
びっくりした僕は、
「ちょっと待ってください、これだけのモノを扱うには勉強が必要やから、準備できたら必ず取りに来ますので」と返し、2年後に取りに行った。
2020年、心の準備ができた僕は梅さんの工房兼自宅に材を引き取りに行った。梅さんに大きな宿題を出された僕は、少し抗って、「梅さんとコラボレーションのボードにしたい」と懇願し、はじめは断ってきた梅さんを押し切り、梅さんの磁器をはめ込んだアートボードにする、という事になった。
まずは、大切なイメージ共有。
以前に、海陽町に寄贈したボードがリビエラ宍喰に展示されているので、
どんな感じになるかを確かめに行った。
現在は、このボードにも梅さんの陶磁器が埋め込まれています。
作品の絵付け作業をする前に、サインを入れてくれ、という事で、
サインを掘らせていただきました。
この頃は、宍喰八幡神社の老朽化問題に取り組んでいるころで、
まずは井戸を掘ってみることになり、お手伝いすることになった。
そこには梅さんの姿もあり、今回の作品の施主となる大黒氏が積極的に取り組んでいた。
そういった背景から、床の間に飾るサイズのサーフボードを作ることになり、
Paipoになることが決まった。
陶磁器を埋め込む配置は、宍喰祇園神社の本殿から見た、
夫婦楠の配置を参考にしている。
作品を作ることになった時のメモ書き。
僕の工房、ファンサーフファクトリーに持ち込まれた材。
試しに、角を鉋で削ってみると、美しい木目が現れた。
シェイピングコンセプトは、僕が愛用しているPaipoを参考にした。
施主さんも決まり、コンセプトやデザイン、関わっていただく職人さんたちも決まり、いざ製作にはいると、ことごとく作業を中断しなくてならないような出来事が重なり、時期をずらし、また製作に入ると、またもや製作を中断しなくてはならない、、、といった出来事が重なりに重なり、必然的に約4年の時をかけなくてはならない出来事が続いた。
そんな中、作業を再開するきっかけを作ってくれたのがSam Yoon氏の来日だった。
以前から交流が深く、一緒に仕事ができれば良いね、と話し合っていたのだが、それが実現することになり、6本のサーフボードを製作することになったのだ。
Samがシェイプをしたボードを、僕がグラッシングを施す、といった内容で、共作が実現したのだった。
Samの存在にインスパイアされた僕は、
「今しかない!!」
と、Paipoのシェイプを再開した。
作業中、Samが刻む軽快なリズムの隣で、Paipoをシェイプ。
お互いの作業音が、まるで会話をしているような不思議な空間に包まれた。
こうして、シェイプを終えたボードに陶磁器を埋め込む掘り込みを施し、
いよいよ漆塗りを担当していただく堤氏のもとにPaipoを託した。
入魂の塗りを施す堤氏。
そして漆が硬化してから、陶磁器をはめ込んで接着し、隙間の部分には”サビ”と呼ばれる、漆と砥の粉を練り合わせたものを使用しました。
台座は伊勢神宮神楽殿の古材を使用して那須直也氏が製作。
生地の染めは、庄司拓也氏が宍喰八坂神社の泥染めと藍染めをグラデーション。
縫いは宍喰の大ベテラン、林由井氏に施していただきました。
製作をはじめてから4年の歳月を要したPaipoを、
2024年11月大安吉日
施主様に納めることができました。
製作期間中、本当にいろいろな出来事がありました。
中でも、梅さんが他界してしまったことは大きな出来事でした。
モノ創りについて、その心構えなどを良くお話してくれた梅さん。
人々の心の安らぎと、平和の想いを込めた梅さんの作品。
その想いに、ご一緒できたことを誇りに思います。
今回、多くの職人さんたちに多大なるお力を添えていただきました事、
厚く御礼申し上げます。
今日は少し肌寒く、小雨が降っている。
そんな中でも、マリーゴールドがキラキラと輝きながら元気にたくましく花を咲かせているのでした。
Aloha Ke Akua
Aloha Nui Loa